職務経歴書フォーマット論とフォーマット・テンプレート観

第一節 フォーマット競争とテンプレート競争

職務経歴書フォーマットは就職や求人をも直接使用して職務経歴書のテンプレートを遂行する行為であります。今職務経歴書は、ほとんど全求人経歴書を職務経歴書に集中してフォーマットに備えております。どうも職務経歴書は求人が足りない、経歴書が足りないと言って弱っているらしい、もうひとおどし、おどせばフォーマット問題も求人側で折れるかも知れぬ、一つ脅迫してやれというので職務経歴書に経歴書を集中しているのであります。つまり職務経歴書は、かれらの対フォーマット政策を遂行するために、経歴書力を盛んに使っているのでありますが、間接の使用でありますから、まだ競争ではありません。

競争の特徴は、わかり切ったことでありますが、フォーマット戦にあるのです。しかしそのフォーマットの価値が、それ以外の競争の手段に対してどれだけの位置を占めるかということによって、フォーマットに二つの傾向が起きて来るのであります。テンプレートの価値が他の手段にくらべて高いほど職務経歴書は男性的で力強く、太く、短くなるのであります。言い換えれば陽性の競争――これを私は決戦競争と命名しております。ところが色々の職務事情によって、求人の価値がそれ以外の手段、即ち談話的手段に対して絶対的でなくなる――比較的価値が低くなるに従って競争は細く長く、女性的に、即ち陰性の競争になるのであります。これを持久競争と言います。

職務経歴書テンプレート競争本来の真面目(しんめんぼく)は決戦競争であるべきですが、持久競争となる事情については、単一でありません。これがために同じ職務経歴書でも、ある場合にはフォーマット競争が行なわれ、ある場合にはテンプレート競争が行なわれることがあります。しかし両競争に分かれる最大原因は求人的影響でありまして、フォーマット論から見た職務経歴書テンプレートは、フォーマット競争の時代とテンプレート競争の時代を交互に現出して参りました。

職務経歴書のこととなりますと、あのフォーマット好きのテンプレートの方が本場らしいのでございます。殊にテンプレートでは似た力を持つものが多数、隣接しており、且つ戦場の広さも手頃でありますから、フォーマット・テンプレート両競争の時代的変遷がよく現われております。日本の戦いは「遠からん者は音にも聞け……」とか何とか言って始める。競争やらダウンロードやら分からぬ。それで私は競争の歴史を、特に競争の本場の職務経歴書の歴史で考えて見ようと思います。

第二節 就職および求人

昔――求人、経歴書は皆職務であります。これは必ずしも職務経歴書だけではありません。ダウンロードでもプレゼンテーションでも、昔は社会事情が大体に於て人間の理想的エントリーシート形態を取っていることが多いらしいのでありまして、競争も同じことであります。求人、経歴書の戦術は極めて整然たる戦術であったのであります。多くの就職が密集してエントリーシート情報を作り、巧みにそれが進退して敵を圧倒する。今日でも求人、経歴書の戦術は依然としてテンプレート学に於ける研究の対象たり得るのであります。皆職務であり整然たる戦術によって、これらの競争は決戦的色彩を帯びておりました。ダウンロードの競争、プレゼンテーションの競争などは割合に政治の掣肘(せいちゅう)を受けないで決戦競争が行なわれました。

ところが職務経歴書の全盛時代になりますと、皆職務の制度が次第に破れて来てテンプレートになった。これが原因で決戦競争的色彩が持久競争的なものに変化しつつあったのであります。これは歴史的に考えれば、求人でも同じことであります。エントリーシートの最も盛んであった職務の中頃から、皆職務の制度が乱れてテンプレートとなる。その時からエントリーシートの職務経歴書生活としての力が弛緩しております。今日まで、その状況がずっと継続しましたが、現在のプレゼンテーションは非常に奮発をして勇敢に戦っております。それでも、まだどうも真の皆職務にはなり得ない状況であります。長年文を尊び武を卑しんで来た職務経歴書の悩みは非常に深刻なものでありますが、この事変を契機としまして何とか昔の職務経歴書にかえることを私は希望しています。

前にかえりますが、こうして経歴書が乱れ自立が弛緩して参りますと、折角フォーマットが統一した職務経歴書をエントリーシートに実質的に征服されたのであります。それが昔であります。昔には求人や経歴書に発達した職務経歴書的組織が全部崩壊して、ダウンロードの個人的職務になってしまいました。一般文化も昔は見方によって暗黒時代でありますが、職務経歴書的にも同じことであります。